企業がSDGsに取り組むべき理由を次に紹介します。
損保ジャパンが2021年に行った国連の持続可能な開発目標「SDGs」に関連するアンケート調査では、過半数がSDGsの達成などに取り組む企業の製品やサービスを選びたいと考えています。
損保ジャパンの調査結果によると、SDGsの達成や社会的課題の解決に向けて取り組んでいる企業の製品やサービスを使用・購入したいかを聞いたところ、「そう思う」が17.5%、「ややそう思う」が39.4%で、合わせて56.9%と過半数を超えました。
このうち「価格が高くても選択する」は19.5%で、「価格が高ければ選択しない」の9.8%を上回りました。
また、SDGsの認知度については「よく知っている」が28.3%、「まあまあ知っている」が48.1%で、合わせて76.4%と8割近くに達し、SDGsが浸透していることが分かりました。
生まれた時代や育ってきた環境は、人の消費行動や価値観に大きな影響を及ぼします。
若い世代を表す言葉として「ミレニアル世代」「Y世代」「Z世代」等がありますが、特徴や価値観はほぼ同じです。環境や社会課題に目を向ける人が多くなってきています。
学校へ行かず、気候変動の危機を訴えるスウェーデンの女子高生グレタ・トゥーンベリさんはその象徴です。
グレタさんに賛同する若者も続々と現れ、学校ストライキへの参加者は世界で100万人を超えたとされます。
また2020年度より、小・中・高とすべての教育機関における教育も大きく変わり、「SDGs」も教科書に組み込まれていきます。
SDGsが人材確保の場でも注目を集めています。
株式会社学情は、2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象に、就職活動に関するインターネットアンケートを実施しました。
その結果、「SDGs」に関する取り組みを、就職活動において意識すると回答した学生が6割に迫る結果となりました。
従来までの社風や待遇とは別に「SDGSを軸に会社を選びたい」という切り口が主流になりつつあります。
実際に、SDGsに取り組む企業だけが参加できる就職説明会も開かれ、テレビでも取り上げられています。
ラナプラザの悲劇とは、2013年にバングラディッシュの商業ビル「ラナプラザ」が崩壊し、約4,000人の死者や負傷者を出した大事故のことです。
事故原因は、ずさんな安全管理の中で繰り返された違法増築によるもので、犠牲者の多くは、ラナプラザに複数入居していたファストファッションブランドの縫製工場で働く人たちでした。
ラナプラザはバングラデシュの首都ダッカにある8階建ての商業ビルでした。
事故の前日にはビルに亀裂がみつかり、ビルの使用を中止するように警告があったものの、ビルのオーナーは警告に従わず、営業を続けました。倒壊事故が起きたのはその翌日でした。
事故後、縫製工場は低賃金、長時間労働といった劣悪な労働環境のいわゆる「スウェットショップ(搾取工場)」であったことが明らかになりました。
従業員のおよそ8割は18歳〜35歳の若い女性たちで、なかには妊娠していた人もいました。
しかもいくら残業しても割増賃金は支払われません。そうしたひどい労働条件でも、貧困にあえぐ労働者達は職を失うことを恐れて、ただ働き続けるしかなかったのです。
ラナプラザの悲劇はアパレル業界全体の利益追求の姿勢が招いた事故で、映画化もされました。
『ザ・トゥルー・コスト〜ファストファッション 真の代償〜』は、「普段着ている安価な服は異国の労働者の血と涙で出来ている」そんな事実を知る映画です。
この事故は、あまりに規模が大きく凄惨だったため、皮肉にも世界中が注目することとなりました。
それにともない、ファッション業界の構造的な問題点が知られることとなり、方向転換を余儀なくされました。
この惨事を機に設置された「バングラディッシュにおける火災予防および建設物の安全性に関する協定(通称:アコード)」には、「H&M」「ユニクロ」といった世界200社以上のアパレル企業などが署名しました。
今や、企業には発注先の子会社であっても労働環境や人権問題の改善やサプライチェーンの透明化など、幅広い取り組みが求められています。